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実績紹介

Design of a new apartment building共同住宅の新築事例

鉄筋コンクリート造の共同住宅新築工事

東京都内で、鉄筋コンクリート造の共同住宅を新築した事例をご紹介します。これから土地を買って家や賃貸アパートを建てる人のために、部分的にでもご参考になればと思います。
この記事は、筆者が不動産会社の建築設計部門で働いていたときの経験について書いたものです。筆者の当時所属していた会社は依頼主様(建物所有者様)との契約により、プロジェクト企画者および設計監理者として関わりました。私が消費者として土地を購入・建物を建築した別の事例についての内容も一部織り交ぜながら、建物の新築工事の流れについてシェアしたいと思います。

1. 土地を探すときに考慮するべきこと

まずはじめに、共同住宅を建てるための土地を探す段階から、このプロジェクトは始まりました。 土地探しの際の要点はいくつかあります。建築行為に関連する法規制(道路との関係によるもの)については、下記のブログに書きました。(英語のみで書いております。)

(1) Restrictions relating to the road facing the site and the land on which the building cannot be rebuilt

(2) The gross floor area of buildings that can be built (←coming soon)

次に、その土地に建てられる建物の大きさと用途に関する制限を調べて、概略、どの程度の大きさの建物が建てられるかを検討する必要があります。 何件か検討作業を行ってみると、魅力的な場所ではあっても建物がほとんど建てられない土地などを、次第に見分けられるようになります。

ご参考のため、土地を調べるときの役に立つチェックリストを作りました。(英語のみで書いております。)

Checklist at the stage of considering land to buy

私が関わったいくつかのプロジェクトでは、地盤の良好な丘陵地を敷地としたり、便利な場所にある埋立地に立地する商業地を敷地としたケースがありました。

2.  アパート・マンション建築の計画はどのように行うか

気に入った土地をいくつかピックアップしたら、次に行うべきことは、その土地に、どのくらいの大きさの建物が建つかについて、簡単な図を描いて検討し、それぞれについて概算の事業計画を作成して、候補を絞り込んでいくことです。

ある土地に建てられる最大の建物の大きさを決める要素としては、主に、建蔽率、容積率、高さ制限の3点が挙げられます。これに加えて、住宅の居室は、居室の窓から隣地までの距離に応じて、「有効な採光面積」を確保するよう定められているので、隣地境界線の方向を向いている面に居室を面させる場合は、「有効な採光面積」の確保が制約条件になることがあります。
また、地方公共団体の条例も、大きな制約となることがあります。例えば東京都の場合、東京都安全条例という条例があり、道路に面しない住戸からの避難経路として、一定の幅員の空地を確保することなどが定められています。このような条例も、建物の大きさに影響を及ぼします。

私が担当したある事例では、建蔽率が40%、容積率は100%、高さ制限は絶対高さ制限が10m以内であるということに加えて、第一種高度斜線という厳しい制限のある場所でした。 また、建物を、道路境界線から2m後退させ、隣地境界線から1.5m後退させるという、「壁面後退」の指定もありました。 また、別の事例では、建蔽率が80%と60%の混合、容積率は300%、という場合もありました。建蔽率や容積率、高さ制限が厳しい場合、ある程度敷地が広く、かつ、地下室をつくるなどしないと、マンションを建てることは難しくなります。(地下室は、工事費は高くなるのですが、建蔽率、容積率、高さのいずれの制限にも反映されないので、地下を利用することで、建物の規模を大きくすることができます。)

このような法律上の制限と、建築工事費を勘案して、バランスのよい建物の大きさを試算することが必要になります。どれくらいの大きさの建物が建てられるかを試算したら、それに対して工事費がどの程度かかるかを試算し、事業収支を作成しました。 また、この時期には、資金面での検討も必要になります。

工事費の試算の際には、建物の構造の種類を想定することも必要になってきます。 建物の構造の種類には、高さが10m以内の低層の建物では、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などが採用されますが、私が担当した事例では、分譲マンションの供給プロジェクトであったため、最も遮音性に優れる鉄筋コンクリート造を採用することとなりました。 鉄筋コンクリート造の長所としては、構造体が白アリに食べられることがなく、適切にメンテナンスを行なえば長期間(例えば100年以上)使えると考えられること、コンクリートで面を作る工法であるために、断熱性能と関連する気密性を確保しやすいこと、竜巻などの災害に対しても堅固であることです。一方、短所としては、プレファブリケーションできない要素が多いため、木造、鉄骨造と比べて、建設コストが高額であることが挙げられます。

3. 事業計画における税金

住宅の建て主からみた住宅取得の際には、税金に関わる内容も支出に含まれます。住宅の取得、保有、売却時にかかる税金を一覧表にしましたので、必要な方はご参照ください。(英語のみで書いております。)

Taxes on real estate (acquisition, keeping and disposition)

4. 土地の購入契約

資金計画と工事予算についての目途が立ち、土地の購入について意思決定を行ったら、土地の売主と、購入契約を結びます。 土地の購入契約書には、どのようなことが記載されているのでしょうか?この点については、後日別途ブログを書く予定です。

5. マンションを建てるときの基本的な流れ

土地の購入前に、ある程度設計の下検討は必要ですが、本格的な設計作業は、土地の購入契約後に行うことが一般的です。土地の購入後の、マンション建築の基本的な流れは以下のとおりです。

(1) 建築主と設計者が設計業務委託契約を結んだ後、設計者が設計図を作る(各部寸法や仕様を決定し、並行して構造設計、設備設計を行う)。なお、構造設計のため、設計着手前に、必要な地盤調査も行う。 (2) 建築主は、施工会社から、設計図に基づいて見積もりを取得する。
(3) 建築主と設計者、施工会社は、工事費が予算を超過した場合、必要な調整作業を行う。
(4) 建築主は、当該地域を管轄する地方公共団体または指定確認検査機関から、建築許可を得る
(5) 建築主は、工事内容と工事金額を承認し、かつ、地方公共団体または指定確認検査機関から、建築許可を得ることができたら、施工会社と工事請負契約を結ぶ。
(6) 施工会社は工事を実施する。
(7) 当該地域を管轄する地方公共団体または指定確認検査機関から、申請時の図面と実物が一致していることについての検査を受け、検査済み証の発行を受ける
(8) 工事完了、入居開始

このプロセスにおいて、隣接する住民に計画内容を説明したり、消防署にも届け出を行う必要があります。また、建物が完成したときには、建物の登記手続きも必要になります。

6. マンション設計の要点

建築設計を行ううえで、ポイントとなる点は数多くありますが、例を挙げますと、下記のような項目があります。
法律を守っているか
構造形式、耐震強度
雨漏りを防ぐ
結露を防ぐ
万一火災になった場合に備えた避難経路の確保、防災設備の設置、消防署への届け出
隣戸・上下のお宅との音の問題、共用設備などとの音の問題、外部からの音の問題
断熱性能
将来のメンテナンスのしやすさ
安全性(例えば階段の安全性など)
バリアフリーの度合い
使い手の生活スタイルに建物が合っているか
眺望が得られるか
窓に庇はあるか
バルコニーはどのように計画されているか(庇として、室外機置場として、洗濯物干し場として、プランターを置くなどの活用法)
外部空間は充実しているか
共用部は使いやすいか(エントランスホール、オートロック、自転車置き場、ごみ置き場、駐車場、エレベーター)
植栽は効果的に行われているか

7. 工事の様子

延床面積が1300㎡程度、地下1階・地上4階のあるプロジェクトでは、次のようなスケジュールで、工事を行いました。

工事の途中の様子を、少し写真でご紹介します。

(1)掘削・山留め・床付け

この写真は、建物ができるまでの一時的な措置として、土が崩れないように、背面の硬い地盤にアンカーを打ち込んで、側圧を支える山留め工法における作業の様子を示しています。

この写真は、設計図で定めた深さまでの掘削を終えて、基礎を作る前の準備作業として、敷地に砂利や砕石を均し、コンクリートを流し込んでいるところです。

建物の高さは2つのゾーンに分かれており、この写真は、基礎工事の準備を終えた、建物の奥側になる部分を写したものです。

(2)鉄筋・型枠・コンクリート工事

鉄筋の組立、型枠の組立、コンクリートの打設を、1フロアごとに繰り返していきます。型枠の製作は、製作用の図面を別途用意して、工場で行っています。設計監理者は、鉄筋と型枠の作業に入る前の段階で、コンクリートの開口の位置や水勾配など、どのようにコンクリートの形状を作るかを示す施工用の図面の最終確認をします。窓の位置などを間違えると取り返しがつかないので、慎重に確認しました。 工事の進行は、特に地面と接する部分は、作業する内容が多いので期間を要しました。上の階に進むごとに、順調に進むようになりました。

(3)防水工事

(4)断熱工事

(5)住宅設備工事

(6)内装工事

(7)設備工事

(8)検査、確認作業

基礎部分の重要な構造体である梁に、設備配管を通すための貫通孔をあらかじめ設ける必要があります。1箇所でも孔を開け忘れると、取り返しがつかないため、全ての孔が正しい位置に設置されることを、適時に確認する必要があります。この写真は、その確認作業を行っている様子です。

この写真は、床や壁の鉄筋の配置が設計図面通りになっているかどうかを記録するためのものです。コンクリートを流し込んだ後では確認しづらいので、型枠を組む前に記録しています。 柱と梁の配筋も、設計図面通りになっているかどうか、型枠を建てる前に確認しました。

8.  建物の完成

この建物では、購入された方それぞれの希望を反映した住宅を作り上げることができました。 キッチンやお風呂にこだわりのある家、屋上庭園を楽しむ家、ホームシアターを楽しむ家、たくさんの本を収納する家、猫専用通路のある家などです。